脳内PCR実験のすすめ
私は最初に分子生物学の教育を受けてきたので、分子生物学の実験のエッセンスをどう情報科学者に伝えるかに強い関心を持っています。
分子生物学と情報科学の間には、おおきな文化の溝があります。困難は乗り越えるためにある、と信じて進むほかありませんが、その融合領域で学ぶ情報科学出身の方のために、簡単な実験科学についての案内が出来ないものか、と首を捻ってきました。
もちろん、一番良いのは実際に簡単な実験計画を立てて懸命に試行錯誤しながら実験を行うことなのですが、そんな時間もお金もないのが実情です。
そこで情報科学者にとって分かりやすく、論文でも頻出するPCR実験を脳内で模擬実行するのが良いのではないかと思っています。
カリキュラムは以下の通りです。
- Sanger法とPCR法の意義を知る。
- DNA、RNAの構造式を40回ずつ書く。
- DNA塩基対、RNA塩基対の会合図を40回ずつ書く。
- 10merのDNA鎖、RNA鎖を5回ずつ書く。
- ddNTPの構造式を40回ずつ書く。
- ddNTPを終端に持つ10merのDNA鎖を5回書く。
- PCRの各ステップの意味を知る。
- 200merの鋳型dsDNAに対して、150merの領域を増幅するprimerを設計する。
- 200merの鋳型dsDNAが1本だけある初期状態から、上記プライマーを用いたPCR反応を行う実験を想定し、各ステップにおいてDNA分子の状態(分子数、長さ)を正確に記述する。(5 cycle分)
- PCR実験が失敗する要因を知る。
- 部分的に失敗するPCRの各ステップを正確に記述する。(5 cycle分)
実際にやり抜いてもらったときの効果はなかなかのものでした。
しかし、経験上、情報科学出身者でこのカリキュラムを実際にやる人はほとんどいないでしょう。もし、やり通した人がいたら、感想を頂けるとありがたいです。
情報科学出身者側からの分子生物学出身者へのおすすめのカリキュラムがありましたら、是非お教え下さい。